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くろすろーど第29回定例会(学習会&懇親会)
テーマ「アジア各国の国勢と戦後における経済発展〜会計学者から見たアジア〜」
全体写真 講師
今回くろすろーどのメンバーで、大学で教員をされている木本圭一さんに「アジア会計論」についてお話をいただきました。大学での講義4回分ぐらいの内容を1時間半に詰め込んだということで、かなり中身の濃いトークライブになりました。
懇親会は参加されたみなさんの熱気で冷房が効かないぐらいアツかったですね。


[第29回くろすろーど定例会]

日時:2002年6月16日(日) 13:15〜19:30(17:15から懇親会)
場所:神戸商工貿易センタービル26F第1会議室
講師:木本圭一さん(関西学院大学商学部助教授)
テーマ:「アジア各国の国勢と戦後における経済発展〜会計学者から見たアジア〜」
参加者:63名(学習会47名・懇親会56名)


PART1.東アジア・東南アジアの国々または地域(日本以外)


NIES:韓国、台湾、香港、シンガポール(Newly Industrializing Economics)。
ASEAN:シンガポール、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアの「東南アジア諸国連合(Association of South-East Asian Nations)」加盟の10カ国(ASEAN10)。また、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピンをASEAN4ということがある。
上記以外の国々:中国、モンゴル、北朝鮮

東・東南アジアの国々・地域(日本の1人あたりGDP=34,518ドル)

韓国:大韓民国 Republic of Korea
 人口:4,686万人 日本の約1/3
 1人あたりGDP:8,697ドル
 国土面積:10万平方キロメートル 北海道とほぼ同じ

台湾:中華民国 Taiwan、Republic of China
 人口:2,209万人 日本の約1/6
 1人あたりGDP:13,097ドル
 国土面積:3.6万平方キロメートル 九州とほぼ同じ

香港:Hong Kong
 人口:668万人 東京の約1/2
 1人あたりGDP:22,177ドル
 国土面積:1,050平方キロメートル 東京の約1/2

シンガポール:シンガポール共和国 Republic of Singapore
 人口:312万人 東京の約1/4
 1人あたりGDP:26,401ドル
 国土面積:641平方キロメートル 淡路島とほぼ同じ

インドネシア:インドネシア共和国 Republic of Indonesia
 人口:2億442万人 日本の約1.5倍
 1人あたりGDP:483ドル
 国土面積:191万平方キロメートル 日本の約5倍

タイ:タイ王国 The Kingdom of Thailand
 人口:6,208万人 日本の約1/2
 1人あたりGDP:1,996ドル
 国土面積:51万平方キロメートル 日本の約1.5倍

マレーシア:マレーシア Malaysia
 人口:2,271万人 日本の約1/6
 1人あたりGDP:3,472ドル
 国土面積:33万平方キロメートル 日本とほぼ同じ

フィリピン:フィリピン共和国 Republic of Philippines
 人口:7,515万人 日本の約3/5
 1人あたりGDP:868ドル
 国土面積:30万平方キロメートル 日本の約4/5

ベトナム:ベトナム社会主義共和国 Socialist Republic of Viet Nam
 人口:7,806万人 日本の約3/5
 1人あたりGDP:303ドル
 国土面積:33万平方キロメートル 日本とほぼ同じ

中国:中華人民共和国 People's Republic of China
 人口:12億5,909万人 日本の約10倍
 1人あたりGDP:792ドル
 国土面積:960万平方キロメートル 日本の約26倍

(出典:経済企画庁調査局『アジア経済2000』による (1999年データ・中国は1998年データ)

国というのは経済発展をするが、地理・産業資源・人口・労働力に左右される。
そしてこれらをもとに経済政策が決められていく。

PART2.アジア小史(第二次世界大戦後を中心に)

(1)東西冷戦とアジア


1950代 世界的な冷戦体制
1945年 米・英・ソ3巨頭によるヤルタ会談(戦後体制)
ドイツ占領問題をめぐるソ連と米・英・仏3国側との対立 → ドイツの分裂
東ヨーロッパを勢力圏に入れたソ連、いわゆる東側
西ヨーロッパを中心とする米・英・仏のいわゆる西側自由主義諸国

アジアにおける冷戦体制
1.中華人民共和国 対 中華民国
大陸に中華人民共和国が誕生 ← ソ連の援助
台湾に中華民国 ←アメリカの援助
2.朝鮮民主主義人民共和国 対 大韓民国
北に朝鮮民主主義人民共和国
南に大韓民国
1950年 朝鮮動乱の勃発、3年余りにわたる朝鮮戦争
3. ベトナム
北ベトナムではベトナム民主共和国 → 反フランス
南ベトナムではベトナム国 → フランス連合
1954年ジュネーブ休戦協定後、ベトナム国はベトナム共和国
フランスの援助からアメリカの援助へ
ベトナム戦争による南北の対決

戦前のアジア
半植民地の中国および独立政権をたもったタイをのぞけば、一様に植民地
植民地アジアに共通する特徴

1.「複合社会」というピラミッド型の社会構造
第1層 植民母国であるイギリス・フランス・オランダなどの西洋人。(総督、官僚や銀行・会社の首脳部として統治階級を形成)
→ 戦後は西洋人から現地人(現地人・華僑の財閥ブルジョアジーあるいは高級軍人)
第2層 商人の中間層。東南アジアでは、中国人華僑がほとんどこの層を独占。
旧英領インド・ビルマなどではインド人、主としてバーシー族がこの層を独占。
  第3層 現地人の農民の最下層。

2.「二重経済」
互いにほとんど関連をもたない2種類の経済の併存。
a.西洋人の投資・経営による輸出専用商品の大規模農園(プランテーション)。
例:インド・セイロンにおける紅茶生産、コーヒー・砂糖・ゴム、錫などの鉱業
b.現地消費を中心とする小農民の穀物生産。

3.小乗仏教、ヒンドゥー教、イスラム教などの戒律の厳しい宗教。
厳しい戒律 → 政治・経済・社会の深層に根を下ろした民衆生活の規範→宗教戦争の要因

太平洋戦争による日本軍の占領→現地人の発言力の強化
戦後のアジアを概観すると、その契機になったのは”結果的には”日本の占領であり、これがアジアと欧米の関係を切り、独立のキッカケに。

戦後かつての植民母国であった国々のアジアへの復帰

独立の機運
1950年 インドネシア共和国の成立。
1947年 旧英領インドは、インド・パキスタンとして独立すると同時に分裂。
1948年 ビルマ(現ミャンマー)、セイロン(現スリランカ)の独立。
1957年 マラヤの独立、のちマレーシア連邦 → シンガポール1959年に分離独立。
1946年 フィリピンの独立。

(2)世界の多極化

1961年に勃発したキューバ危機が、冷戦構造の最後の事件
1960年代 米ソ両大国の「平和共存」、世界の「多極化」の時代

1.「平和共存」の最初の契機
→1956年フルシチョフがソ連共産党第20回大会において突如発表した、スターリン批判の演説。
非スターリン化の衝撃→ハンガリー、ポーランドなど東側共産圏諸国に波及、
1960年代には中ソの2大社会主義国の間で路線の対立が激化。→社会主義諸国の間で独自の路線をあゆむ多様化。

2.1960年代におけるアフリカ諸国の独立。
1950年代、アフリカの独立国モロッコ、チュニジアなど数カ国
1960年に、コンゴーなど17ヵ国が一斉に独立。
1970年代までにアフリカの独立国は40数カ国
これら諸国は国連に加盟して一大勢力となる。
豊かな資源開発の西側先進国への依存→政治的独立の弱体化→先進諸国の介入→局地的紛争
=1950年代世界の冷戦構造を1960年代になってもちこんだアフリカ版の冷戦構造

3.西側ヨーロッパ諸国の経済的統合の試みであるEC(ヨーロッパ共同体)の出現。
ECははじめ6カ国参加のEEC(欧州経済共同体)として1958年発足
1973年9カ国加盟のEC
2002年時点EU(欧州連合)として15カ国。
そして、2002年に共通通貨のユーロ(一部のEU加盟国を除く)が流通。

4.ソビエト連邦の崩壊
1987年 ペレストロイカ
1989年 ベルリンの壁崩壊
1991年 ソビエト連邦崩壊(独立国家共同体の創設)ソ連からの被援助国の自主独立運営化

(3)アジアの多極化

1.米中ソ3大国の多極的構造
…中ソの対立による多極化

2.アジア内部の諸国の多極化。
中国とインドの対立(チベット問題をきっかけに中印国境紛争)
インドとパキスタンの対立(東パキスタンが分離独立してバングラデシュ)
1965年 インドネシアのクーデター事件→インドネシア=反共軍事政権国家へ

3.1960年代から1970年代にかけての事件としてベトナム戦争
1964年 アメリカ空軍の北爆(北ベトナム空爆)開始
1965年 米軍介入
1975年 サイゴン政権の崩壊

(4)アジア世界の再編

1960年から日本や欧米企業の進出→資金の投下
1970年代台湾、シンガポール、韓国、香港などのアジアNIEsの急速な経済発展その後「ASEAN4」「ASEAN10」へ。
1980年代 社会主義、民族主義、親米・親ソ連などの「政治の論理」の希薄化…「経済の発展」が目標に。中国・ベトナムも市場経済へ。

●アジアの情勢を流動化。同一民族の分裂国家を統合の方向へと推進、政治を民主化。
●資源確保や交通路確保などをめぐる、経済利害の対立
例:南シナ海の南沙諸島の領有をめぐる中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイの争い
(以上本節は[大澤:1995]を参照)

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トークライブ

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▼懇親会のようす

懇親会

懇親会

懇親会

懇親会

懇親会

懇親会
PART3. 東・東南アジア諸国の概観

(1)東・東南アジア諸国・地域の言語・宗教・旧宗主国


日本 言語:日本語 宗教:仏教・神道 旧宗主国:なし
韓国 言:韓国語 宗:仏教・キリスト教 旧:日本
台湾 言:中国語 宗:仏教 旧:日本
香港 言:中国語・英語 宗:仏教 旧:イギリス
シンガポール 言:マレー語・中国語・英語 宗:仏教・イスラム教
       旧:イギリス
マレーシア:言:マレー語・中国語 宗:イスラム教・仏教 旧:イギリス
タイ 言:タイ語 宗教:仏教 旧:なし
フィリピン 言:タガログ語・英語 宗:キリスト教 旧:アメリカ
インドネシア 言:インドネシア語 宗:イスラム教 旧:オランダ
ベトナム 言:ベトナム語 旧:フランス
中国 言:中国語 旧:帝国列強の影響で分断

(2)各国・地域の旧宗主国との関係などの概観

1.韓国
韓国は、1910年の日韓併合により日本の統治下におかれ、その後1945年に日本が敗戦したことにより、独立することとなった。 1996年末にOECD(経済協力開発機構)への加盟をはたした韓国では、会計を含むさまざまな局面で国際化の動きがみられる。

2.台湾(中華民国)
台湾(中華民国)は、日清戦争後の1894年に日本に割譲されてから、日本の敗戦に伴って1945年に国民党の支配下にはいるまで、日本の統治下にあった。そのため、会計をはじめさまざまな局面で日本の影響を受けてきた。現在、台湾はWTO(世界貿易機関)への加盟を目指しており、経済のしくみの国際化を急いでいる。

3.香港
香港は、阿片戦争のあと1842年に南京条約により香港島がイギリスに割譲された。その後、1860年に北京条約により九龍半島の一部が、また1898年に99年間の租借権が与えられた新界およびその周辺諸島がイギリスの直轄植民地となった。香港政府の首長はイギリス国王によって任命された総督であった。香港の法律は1966年「イギリス法適用条例」により、イギリス法にならうこととされている。1997年7月1日に、香港は中国へ返還されたが、中国政府は50年間は1国2制度として現在の香港の制度を維持することを表明している。

4.シンガポール
シンガポールは1824年から1956年までイギリスの直轄植民地であった。ただし、1942年から45年までは日本軍政時代であった。シンガポールは1963年に、マレーシアの一州として独立し、その後1965年に、マレーシアから分離独立して今日に至っている。 このような歴史的経緯から、シンガポールはイギリスの影響を強く受けてきたといえる。

5.マレーシア
マレーシアの歴史はイギリスの植民地としての歴史であった。1795年にイギリスがマレー半島西岸のほぼ全域を手中にし、1824年以降はイギリスの植民地となった。マラヤ連邦が独立することになったのはようやく1957年になってのことである。1963年にマレーシアが結成され、1965年にはシンガポールがマレーシアから分離独立して現在に至っている。

6.タイ
タイは、ここで取り上げる他の諸国と異なり、植民地支配を受けたことがない。1960年代に工業化が進展する中で、日本やアメリカを中心に外資による直接投資を受け入れたこともあり、法制度は特定の宗主国ではなく、多くの国(特に欧米諸国)の法律の影響を受けている。

7.フィリピン
フィリピンは、1500年代から1898年の長期間スペインの植民地であった。その後1898年の米西戦争から1946年まではアメリカの統治下にあったため、経済の諸制度においてもアメリカの影響がみられる。

8.インドネシア
1600年代から1942年までインドネシアを支配していたのはオランダであった。第2次世界大戦中の1942年から45年までインドネシアは日本軍政による支配を受けたが、同年8月に独立した。独立後も1950年までインドネシアと旧宗主国オランダとの間には戦闘状態が続いたのである。

9.ベトナム
1887年フランス領インドシナとして、フランスの統治下にあったベトナムは、第2次世界大戦中の日本軍の占領を経て、1945年にベトナム共和国として独立した。しかし、南北ベトナムの対立とアメリカの介入によって、ベトナム戦争が勃発し、1975年にサイゴン陥落まで戦争は続いた。結局、北側が勝利し、ベトナム社会主義共和国が設立された。社会主義経済運営は、経済の沈滞化を招き、1985年ドイモイ(刷新)政策によって、経済振興がはかられた。アメリカとは1992年まで国交は断絶していた。ここ数年は安定した物価と高度経済成長を果たしている。

10.中国
中国では現在、社会主義市場経済の政策をとっている。1989年8月中国共産党第13期4回全人民代表大会で「計画経済と市場経済との統合」がうたわれ、1993年には憲法を改正して、その第7条で「国家は社会主義市場経済を実行する」と規定した。
(以上本節は[平松:1997]を参照)

では木本先生の専門分野「アジア会計論」を。
PART4. アジアの会計

(1)アジア各国の旧宗主国と現在影響を及ぼしている会計基準


韓国…日本/日本型→国際会計基準・アメリカ
台湾…日本/日本型→アメリカ・国際会計基準
香港…イギリス/イギリス・国際会計基準
シンガポール…イギリス/国際会計基準・イギリス・オーストラリア
マレーシア…イギリス/国際会計基準・イギリス・オーストラリア
タイ…なし/国際会計基準・アメリカ
フィリピン…アメリカ/アメリカ
インドネシア…オランダ/国際会計基準・アメリカ
中国…各国/国際会計基準
ベトナム…フランス/国際会計基準に近いもの(ソ連・フランス)

各国の基準はIAS(国際会計基準)に向かっているが、旧宗主国の影響を受けている。ただし日本型の影響は消えている。

(2)国際会計基準(IAS)

各国の会計基準・公表財務諸表の相違を狭めるために、各国会計基準の国際的調和化を目指す国際会計基準審議会(IASB)が設定している。
IASBの前身のIASC設立当初は、各国公認会計士協会が母体であった。現在は、各国の証券取引を監督する国際的な機関である証券監督者国際機構(IOSCO)の後押しを受けて、IASが証券取引のための会計基準における実質的な国際基準になりつつある。IASBには各国会計基準設定主体の代表が出席することで、これまでの各国会計士団体の集まりであったIASCよりより強力な国際団体となっている。
現在では、IASは、会計理論上も会計実務上も無視できない重要な基準となっている。

(3)NIESおよびASEAN諸国が英米基準準拠およびIAS準拠を図る要因

1.会計基準への英米基準の影響に関する教育的要因[平松:1997]
●会計先進国や機関からの会計政策の指導(日本はしていない)
●各国の大学教員における英米(+豪)学位取得者の高率な割合

2.国際会計基準への調和化についての一つの観点[平松:1997]
●IAS採用のコスト面…専門家が少ないため条文化されている外国の基準をそのまま採用
●基準の柔軟性(10年前までは)
●支持基盤…IASC…公認会計士の団体が主催のため扱いやすかった
●国際的信頼性が得やすい

(4)アジア各国の文化と会計

グレイ「文化と会計−理論仮説」[Gray:1989]
●専門職主義 対 法規制主義 (Professionalism versus Statutory Control)
●画一主義 対 柔軟主義 (Uniformity versus Flexibility)
●保守主義 対 楽観主義 (Conservatism versus Optimism)
●秘密主義 対 公開主義 (Secrecy versus Transparency)
↓ 再区分
1)会計制度を決定・施行する権威(専門職主義と画一主義)
2)測定と開示に関する会計制度の特徴(保守主義と秘密主義)

これによるとアメリカやイギリスひいてはIAS(国際会計基準)の会計的価値とアジア各国の会計的価値は、アメリカやイギリスとは随分異なる。つまり香港・シンガポールを除くアジア各国は基準や条文はIASを謳っているが、実際の実務や制度や態度は決してIASや英米系から程遠い。
具体的には
●会社はそもそも積極的に会計を開示しない
●本来は専門家の判断で会計を開示しなければならないのに、専門家の判断よりは法律の規定(法律に書いてあるから仕方なく)を優先する。

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